PMJのサステナビリティ
加熱式たばこで、煙のない未来をリードしていきたい。
渉外部サスティナビリティ担当
濱中祥子
喫煙者にとっての最善の選択肢が禁煙であることは、紛れのない事実です。しかし、喫煙を続ける意思を持つ方々が存在することにも、私たちは目を向ける必要があります。社会全体の公衆衛生のためにPMIがすべきことは、紙巻たばこの喫煙と比べて害の少ない代替品を開発・販売し、一人でも多くの成人喫煙者に切替えていただくことだと考えています。
こうした方針は、PMIのサステナビリティ戦略にも反映されています。 PMIでは、製品、事業、社会、環境に関する四つの柱のもと、社会にもたらすインパクトとステークホルダーからの期待を総合的に検討し、優先課題を策定。2020年3月にはパーパス ステートメントを発表し、紙巻たばこのない未来に向けて業界をリードしていくことを再確認しました。私たちは近い将来、多くの国で紙巻たばこの販売を終了できると考えており、それに向けて努力をしていきます。しかし、私たちだけではこの未来は実現できない。規制当局や市民社会をはじめとした、私たちを取り巻く社会のみなさまが、どこまで事業変革に理解・賛同いただけるかが、鍵を握ると認識しています。
事業改革の中心的な役割を担うのが、紙巻たばこよりも健康に対する影響の少ないニコチン含有製品である「加熱式たばこ」です。当社の主力製品「IQOS」をはじめとした加熱式たばこは、煙の出ない製品と異なり、たばこ葉を使用していますが、燃焼を伴わないため、「火を使用しない」「煙が出ない」といったメリットがあります。当社は今後も、ニコチン含有製品を使用する意思のある20歳以上の喫煙者に対し、紙巻たばこに変わるより良い選択肢として、煙の出ない製品を推奨していきます。
加熱式たばこの普及状況
加熱式たばこの技術革新が、ビジネスモデルに大きな変革を。
マーケティング部製品ポートフォリオ担当
村上彰啓
弊社の加熱式たばこは、2014年に名古屋とミラノで先行発売をして以来、世界におけるユーザー数は着実に増え、2021年9月時点で2,000万人を突破しました。日本における当社の紙巻たばこ・加熱式たばこの出荷本数の構成比では、2020年の第二四半期以降、加熱式たばこが大きく上回る形で推移しています。
スティック内の有熱剤によってたばこ葉を内側から直接加熱する技術をはじめ、弊社の加熱式たばこは製品改良とイノベーションを重ねてきました。2021年8月には最新モデルのシリーズ、専用たばこスティックを上梓。さまざまなニーズにあったポートフォリオを展開しています。これらの製品開発とともに、企業における喫煙環境の整備といったBtoBビジネスの展開など、事業モデルそのものに変化があったことが、当社のここ数年における大きなビジネストランスフォーメーションだったと実感しています。
たばこ製品の身体への影響
“より良い選択肢”で、喫煙者の健康と未来を守りたい。
渉外部科学担当
小西絵美
喫煙は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺がんなどの重大な疾患の原因とされているため、吸い始めないこと、やめることがベストです。その上で、喫煙を続ける方々に対する別の方策を突き詰めた結果、当社が至ったのが『たばこハームリダクション』です。これは、喫煙を続ける意思のある成人喫煙者に対し、たばこ製品の中でも有害性の高い紙巻たばこの代替として、有害性を低減した“より良い選択肢”を提供する考え方。たばこハームリダクションにより健康被害を社会全体でなくし、公衆衛生に良いインパクトを与えることを目指しています。
そもそも、紙巻たばこの何が一体悪いのか。多くの方が思い浮かべるのがニコチンかと思います。ニコチンには依存性があり、短期的には心拍数や血圧の上昇といった作用があるため、リスクはあります。しかしニコチンは、COPDや肺がんの主な原因ではありません。病気をもたらす原因は、実は燃焼なのです。
たばこは、葉にニコチンを含むナス科の植物であり、たばこ葉を850℃以上の高温で燃やすのが紙巻たばこです。燃焼の工程では6,000種類以上の化学物質が発生し、約100種類が病気の原因または潜在的原因であると特定されています。このことから、疾患リスクを減らすためには、燃焼というプロセスをなくすことが有効であると考えられるため、当社はたばこ葉を温める加熱式を推奨しています。
実際に、紙巻たばこの煙に含まれる有害成分を100とした場合、弊社の加熱式たばこは平均90〜95%に低減されるということがわかっています。また、日本で行った臨床実験の結果では、喫煙者における体内に取り込まれる有害性成分も大幅に減っていることも判明。別の実験では、白血球、悪玉コレステロール、酸化ストレスレベルなどの数値で、弊社の加熱式たばこに切替えた場合と禁煙した場合が同じ方向で推移するデータも出ています。これらのデータから、私たちは加熱式たばこへの切替えによって体内の有害性分が減り、健康リスクを低減できると考えています。今後はこうしたデータに加えて、ビッグデータを活用することで精緻化を図り、長期的影響の解明や疾患リスク低減の実証に向けて取り組んでいきたいと考えています。海外における加熱式たばこの動向
加熱式たばこへの移行が、世界中ですすんでいる。
渉外部行政担当
グレゴリー メルチャー
イギリスは、加熱式たばこが紙巻たばこに比べて約80%安く、切替える際のインセンティブも設けられており、パッケージ規制にも違いが見られます。ニュージーランドでは、加熱式たばこや電子たばこが禁じられていましたが、ハームリダクションの手段として電子たばこの使用を希望する喫煙者が利用できる制度を2020年に導入。これによって公衆衛生の向上が目指されています。ユニークなのは年々たばこ税を増税しているチェコで、各製品の有害性の程度に応じた差別化を尊重しながら定期的に増税する施策を採用しています。
世界唯一の公衆衛生の条約であるWHOの「たばこ規制枠組み条約」(FCTC)には180以上の加盟国があり、日本はその一つです。当社では、WHOやFCTC締約国会議といった国際的な取り組みにおいて、科学的エビデンスに基づいた規制を求めていきます。
今後予想される、国内の変化
望まない受動喫煙と、喫煙者ニーズ。両方を満たす取り組みへ。
渉外部規制担当
岡田勝好
紙巻たばこ、加熱式たばこは、いずれも財務省管轄のたばこ事業法による枠組みで『製造たばこ』として規制されています。税率やパッケージの健康警告文はそれぞれ異なり、広告規制は日本たばこ協会の自主規制の中では同様です。改正健康増進法については、喫煙の規制では同じ扱いであるものの、一部は運用に関して異なる部分があります。駅前の喫煙禁止エリアなどは、各市町村の判断で区分されています。2018年に成立した改正健康増進法では、それに伴う政令、省令、厚生労働省建康局長通知によって運用方法が細かく定められています。同法は2020年4月に全面施行という形で、各施設に応じて段階的に施行されてきました。
『望まない受動喫煙』が生じないために、その防止の措置という形で、施設の区分に応じて対策が求められています。たとえば、飲食店を含む『第二種施設』では、専用室のなかでしか喫煙はできませんが、加熱式たばこ専用室においては飲食を伴う利用が可能です。このように、紙巻たばこと加熱式たばこでも規制が区別されているのです。
厚生労働省による『加熱式たばこの科学的知見』では、「加熱式たばこの受動喫煙による将来の健康影響を予測することは困難」と示されています。つまり、明らかになっていないため、現状は経過措置として飲食を伴う利用を可能にしているのが、現在の改正健康増進法だといえます。同法は、施行後5年を経過した場合において、内容の検討および必要に応じた措置を講じると定めているため、2025年が一つの大きなターニングポイントになることが考えられます。
当社としては、禁煙が最善の方法である前提のもと、喫煙のリスクを理解した上で喫煙されている成人喫煙者の選択の自由を奪うような規制に対しては反対であり、紙巻たばこの禁止が成人喫煙者や社会にとって有効であるとは考えていません。そして、これからも喫煙を続けると考えている成人喫煙者のニーズに対応するような、紙巻たばこの害を低減する製品を提供し、公衆衛生の観点から成人喫煙者の方が紙巻たばこから代替品へと切替えていくルールや規制を支持していく姿勢です。
PMJでは、「煙のない社会」の実現に向けて、煙のない施設や観光地が全国で広がる取り組みを推進しています。リゾート地や商業施設で加熱式たばこ専用室の設置支援などを進め、当社がパートナーシップを組む「煙のないランドマーク」は、2021年12月時点で全国17件に達しました。各ランドマークの詳細は、同サイトにて紹介しておりますので、ぜひこちらもご覧ください。